塵壺日誌

日々の徒然を綴った駄文の塵壺

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SEIKO 初代スプリングドライブ 7R68

さて、久しぶりに時計ネタなんぞを・・・
      すぷ表
      すぷ横

上の時計は1999年発売のSEIKOスプリングドライブのファーストモデルCal.7R68を搭載した「SBWA001」と言うモデル。
この時計の面白味はセイコーが20余年の歳月をかけて開発したスプリングドライブという特殊な機構を持った時計駆動機械を搭載していると言う点。
        すぷ裏
グラスバック(時計の裏ふたがガラス張りになっており、中の機械を見ることが可能なケース)になっているので、SEIKOが知識と技術の粋を集め、多大な時間とお金と情熱を傾けて開発したスプリングドライブを覗くことが出来る。
と言っても、機械のほとんどの部分は綺麗に装飾研磨のかけられたプレートに覆われてしまっているので、そのパーツを覗くことは出来ない。

このスプリングドライブと言う機械は、機械式時計の機構を持ち、尚且つクォーツ並の精度を誇る機械として、SEIKOが1977年の機構原理考案、1978年の特許出願から20数年もの時間ととてつもない額の開発費と社運を賭けて開発し、1999年にようやっと市販モデルの販売にこぎつけたSEIKOの知識と技術の粋を集めた逸品。

時計と言うものは、主にぜんまいを主動源とした機械式と電池などの電気的な動力で動くものとに別れている。
機械式時計の主動源はぜんまいであり、ぜんまいを巻き上げ、その巻上げが解かれる時に発生する反発力で歯車を動かすことで時を表示する針を進めていく。
後者は電池やソーラーバッテリーなどの二次バッテリーを駆動動源として、歯車を動かし時を表示する。

どちらの場合も、歯車の回るスピードを一定させることが時計としての機能を実現する条件となるのだけれども、機械式の場合はぜんまいの駆動速度を調節する脱進機と言う調速機構を搭載することで実現し、電池式では様々な原理を試し用いた結果、現在はその正確性と大量生産の容易さ、生産コストの低さからクォーツ制御方式が主流となっている。

クォーツは電圧を加えると一定速度で振動し、その特性を生かし1秒間に32768回振動させる水晶振動子を利用する事で歯車に電気的な原動力を伝える速度を一定化させ時を正確に表示する為の機構で、これは1969年にSEIKOが世界で初めて実用的な生産能率と生産コストの低価格化、時計としての正確性と小型化を実現した画期的な機械を開発し販売を開始した(クォーツの機構原理自体は80年ほど前までさかのぼる事が出来、セイコーが独自に考案したものではない)機構であり、これの登場により機械式時計は、生産性や正確性の低さから、その多くが一気に淘汰される憂き目に会うほどにに大きな発明だった。

時計と言うものはあくまでも時を知る為の道具であり、その正確性が最も重要視される以上、その飛びぬけた正確性を持ち、尚且つ大量生産の容易さやコストの低さ、小型化の容易さなどの点において機械式に比べ圧倒的に優れているクォーツが現在の主流になるのは当然の理でありましょうね。
とは言え、機械式時計には道具としての実用性のほかに、その機構動作の面白さと言う点に多大な魅力があり、ある意味道具ではなく大人の玩具としての存在意義を見出され、一時の衰退も復権の兆しを見せ、ある程度の購買層をつかんでいる。

そんな大人の玩具としての面白味を持ちつつ、クォーツと計並みの正確性を持つ時計機会として開発されたのがこのスプリングドライブと言う特殊機構ムーブメント。
この機械の駆動源は電池やソーラーバッテリーなどの電動源では無く、ぜんまいを用いた機械的な駆動源で歯車を動かすのだけれども、同時に巻き上げたぜんまいの解かれるときに発生する動力を利用し電力を発生させ、その電力を元に水晶を一定振動させる水晶振動子を用いたクォーツ調速機構による時間表示の正確さを追及した、大人の玩具としての機械式時計の面白味と道具としてのクォーツの実用性を兼ね備えた1度に2度美味しいと言う発想の基に作られた。
端的に言えば、電池やソーラー等の充電池等の二次的バッテリーを持たず、ぜんまいの駆動力で電力を発生させ、その電力を利用してクォーツ制御による正確性を追求した時計、と言う事になる。
簡単に書いてますが、とんでもない機構ですよね・・・

その開発に20数年・・・
1998年に時計の世界的規模の見本市であるバーゼルで発表され、翌1999年に初代スプリングドライブ7R68を搭載した市販時計をSEIKOブランドでステンレスモデルSBWA001を国内限定500本、18KYGモデルSBWA002を限定300本、その他クレドールブランドでプラチナモデルGBLG999が限定で販売された。
写真の時計は、そうした敬意で販売されたスプリングドライブファーストモデルを搭載したステンレスモデルSBWA001。

手にしてみると、ケースの質感は差ほどではないのだけれども、針やパワーリザーブインジゲーターの作りの良さはさすがに思える。
秒を刻むドットがプリントではなく、アプライドインデックスである点も良い。
文字盤は、漆黒でやや樹脂っぽい輝きを見せる。
このダサくも見えない事も無い近未来的なデザインも、当時の最新技術を駆使した機械を積んでいると言う自負の表れかもしれない。
何より一部の例外(セイコーの5S系クォーツムーブメントなど)を除き、多くのクォーツ時計の秒針の動きが1秒刻みにステップしていくステップ運針であるのに対し、この時計はクォーツ制御の時計でありながら、秒針の動きが1秒刻みのステップ運針ではなく、流れるように滑らかに進むスィーブ運針である点は、この時計の眼に見える動作としては最大のものかもしれない。

ただ、このスプリングドライブと言う革新的な機構に対しての世間の評価は二分している。
機械式とクォーツ式の両方の利点を兼ね備えたすばらしい機械だと言う人がいる反面、時計を大人の玩具と言う視点で見た場合には、スプリングドライブは機械式時計のムーブメントの面白さや魅力に大きく劣り、道具としての時計としてみた場合には生粋のクォーツ時計の性能に大きく劣ってしまう、SEIKOが自己満足で作り上げただけの独りよがりな機構機械と言う評価もある。

ぼくはセイコーの手巻きは所持していないので、比較対象を同じ国産時計メーカーであるオリエントのロイヤル・オリエントの手巻き時計の機械と見比べてみると
       裏
歯車の輪列や動きが見えるロイヤルオリエントに比べ、そのパーツのほとんどをプレートで隠され見ることの出来ないスプリングドライブは、時計を玩具としてみた場合その魅力は半減する。
機械式の仲でも、ドイツのランゲ&ゾーネやグラスヒュッテ・オリジナル、NOMOSと言ったグラスヒュッテ系の時計は、その時計機械の表面を4分の3プレートで蔽ってしまい中のパーツのほとんどを見ることはできないが
         裏
(グラスヒュッテ・オリジナルのセネタークロノグラフの機械写真)
上の写真のようにその分装飾研磨が半端ではなく、見せると言う事を前提にした時計に比べれば、やはりその部分は遅れをとっている。
ま、グラスヒュッテ・オリジナルと言うメーカーは機械を見せ魅せるという部分に特化した時計メーカーなので、それと比べてしまうのは酷かも知れませんが・・・

個人的に感じる一番大きな欠点は、チクタク音がまったくしないと言う点ですねぇ・・・
機械式時計の魅力の中でも、チッチッチッと言う音を聞くと言う楽しみは実は結構大きかったりするのですが、このスプリングドライブはそういう音が何一つ聞こえてきません。
ちょっと無機質な感じがして、機械式時計の持つ温かみや魅力と言う点からはかけ離れてしまう気がします。

道具としてみた場合、スプリングドライブの精度はカタログ数値で月差+-15秒前後となっている。
この数値は、ヨドバシカメラやドンキホーテと言った量販店で1000円程度で売られているクォーツ時計とほぼ同等の性能と言うことであり、数値そのものは市販のクォーツと比べあからさまに劣っていると言うわけではない。
ただ、この時計は1999年当時の販売価格は25万円であり、当時クォーツとしての最高精度の年差+-5秒と言う驚異的な数値を誇ったシチズン社のザ・シチズンの販売価格は、この時計よりも10万円も安い15万円だったのですよ・・・
現行50万円以上するスプリングドライブの精度は1999年販売当時の数値とほぼ変っていない。
誤差が3000万年に1秒と言うとんでもない精度を誇る原子時計を基にした標準時間を発信基地からの電波で受け取り、常時正確な時刻修正が可能となっている電波時計は比較対象としては反則としても、価格に比してその精度がいまいちと言う点は取り繕いようが無い。

実際、1998年のバーゼルでの発表では、時計業界に大きな衝撃を与えたものの、クォーツと計の発表の時ほどの反響は無く、セイコーに追随しこの手の時計機械の開発に着手する時計メーカーは皆無だった。
これはスプリングドライブと言う機構の難解さ、開発の難しさ、開発技術の高さ、生産コストの高さなど、種々の面でかなりハードルが高い割りに時計としての利点が小さく、時計メーカーとしえもそれを開発しようと言うだけの魅力のあるものに写らなかったせいだろう。
セイコー自身にしてみたところが、このスプリングドライブと言う機械を積んだ時計は、セイコーの展開するブランドでも代表的かつ高級機種ブランドであるクレドールとGRAND SEIKOなどの一部ブランドの、それもその中でもほんの限られた高額機種にのみ搭載し生産数も抑える事でプレミア感を演出する形で販売を行っている辺りに、スプリングドライブに対する世評を垣間見えてしまう気がする。
まぁ、それ故に販売個体が少なく、今後もしかしたら中古市場でプレミアが付いていく事になっていくのかもしれないけれど・・・

とまぁ、欠点を論って腐すだけ腐して見たはものの、実際手に取るとそう悪い時計でもなく、興味深い機械であることには変わりないので、これからも大切にしていこうとは思っているのだけれども。
ま、世の中にはこう言う珍奇な時計もありますよ、と言うお話・・・

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テーマ:腕時計 - ジャンル:ファッション・ブランド

コメント

スイスの時計メーカーが、セイコーにスプリングドライブのムーブメント供給を依頼したそうですが、セイコーはこれを断ったようですね。
日本人の意地的な物ですかね?

  • 2010/05/22(土) 21:29:33 |
  • URL |
  • 名無し #bxvF113M
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

>名無しさん
コメントありがとうございます。
どこかでそういう話があったようですね。
スウォッチグループあたりでしょうか?
セイコーさんとしては相当額の開発費や設備投資を掛けて
出来上がったものですから、おいそれと他社に流す訳には
いかないでしょうしねぇ・・・
生産性やアフターケアなど取り扱いの難しいムーブですし
現状の様に限られた機種のみに搭載してプレミア感を
持たせた売り方を続けるのでしょうねぇ。

  • 2010/05/23(日) 19:11:55 |
  • URL |
  • 玖珠 #3fP8K/.I
  • [ 編集 ]

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